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橘小夢 牡丹燈籠画譜(複製・9枚セット)

商品NO. A2-89-373-17
タイトル 牡丹燈籠画譜(複製・9枚セット)
作者 橘小夢
状態
サイズ 19×26.5cm
価格 SOLD
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「根津の清水谷に、萩原新三郎という若い男が一人で住んでいた。盂蘭盆の夜、寝られぬままに蚊やりを焚いて軒先で涼んでいると、何処からともなく、カランコロンという駒下駄の音がして、庭の枝折戸のあたりへ、奇麗な牡丹燈籠をさげた二人の女が姿を現した。それはこの春向島の飯島の別荘ではじめて会った飯島の娘のお露と、乳母のお米であった。お露とお米は、それから一夜もかかさず、上野の鐘が九つを告げると訪ねて来て、一番鶏の鳴く頃帰っていくのであった。そうしているうちに、新三郎は日に日に痩せ衰えて影がうすくなっていった。谷中の新幡随院の良碩和尚に占ってもらうと、それは 幽霊 が恋こがれて来るのだという。まじないの護符を頂いて戸口戸口に貼り、雨宝陀羅尼経を一心に誦んだが更にききめがない。三七日の夜の明け方、我れと我が手でお札をはがした新三郎は、骸骨の様になって死んでいた。」(橘小夢による「牡丹燈籠画譜」要約より)
 「四谷怪談」「皿屋敷」と並ぶ、日本三大怪談のひとつ「牡丹燈籠」。三遊亭圓朝が中国の小説に想を得て創作したこの物語を、小夢は9枚組の版画作品につくりあげた。白黒の強烈なコントラストや流麗な人物の描写などから、しばしばオーブリー・ビアズリーからの影響関係が言及される作品であるが、小夢が学んだのは単なる造形上の技術にとどまらない。本作において彼は、世紀末芸術のデカダンな雰囲気やエロティシズムまでをも自らの血肉として自在に操っている。小夢の言う「憂奇世絵」の真骨頂が発揮された作品。

橘小夢(たちばなさゆめ)
明治25年(1892)〜昭和45年(1970)
日本画家。黒田清輝に洋画を、川端玉章に日本画を学ぶ。民話や伝説をモチーフとした日本画や版画を多く手掛け、雑誌や小説の挿絵画家としても活躍した。