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川瀬巴水 夜の池畔(不忍池)

商品NO. A1-9-480
タイトル 夜の池畔(不忍池)
作者 川瀬巴水
年代 昭和7年(1932)4月
状態
サイズ 39.4×26.4cm
価格 SOLD
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 人気の絶えた夜の上野公園。街の喧噪ははるかに遠く、静かな水面に揺らぐ明かりが心を照らす。
 本作に先立って描かれた写生によれば、画面左奥の場所には仁丹の広告塔があり、「仁」の赤いネオンが灯っていたようだ。だが本画で巴水はその「ニ」の部分を「ド」に置き換えることで、「ドイ」つまり版元の土井版画店の広告塔へと巧みに作り替えるのである。
 版元や絵師の名を作中に描き込むことは、浮世絵の時代にすでに行われていた。巴水らが牽引した 新版画 運動は、浮世絵の技術を継承しながら新たな時代の版画を模索するものであったが、それは単なる技法の踏襲にとどまらず、こうした遊び心までも受け継いでいるのである。

川瀬巴水(かわせはすい)
明治16年(1883)〜昭和32年(1957)
新版画 家。糸組物職商人の長男として生まれ、伯父には戯作者の仮名垣魯文がいる。 鏑木清方 の門人で、この時「巴水」の号を授かる。後に渡邊庄三郎と知り合い、更に同門の 伊東深水 の《近江八景》を見て、木版画に興味を持つ。大正7年(1918)には渡邊版画店から塩原三部作を発表し、以後生涯に渡って風景版画を数多く刊行。「 新版画 」の代表的作家として活躍する。