広重 魚づくし 車海老・鯵にたで
![]() |
名所絵 で成功をおさめた 広重 が続いて取り組んだのは、草木や鳥、虫や魚などを描く花鳥版画の分野であった。『 魚づくし 』と呼ばれる本作品は、もともと 摺物 (狂歌・俳句・暦などに絵を添えて摺ったもの)として出版された、全20枚からなる揃いものの中の一枚である。制作にあたり鍬形恵斎の『魚貝譜』を参照したとされるが、単なる引用や表面的な模写に終わらず、魚のもつ日本的な情緒をも描きだす手わざには、 広重 の観察眼の鋭さと彼独自の創意が感じられる。
広重(ひろしげ)
寛政9年(1797)〜安政5年(1858)
浮世絵師。画号に一遊斎・一幽斎・立斎・歌重などがある。豊広の門人で狂歌本の挿絵や 役者絵 を初筆として画業に入る。天保3年、幕府八朔の御馬献上の行列に随行して上洛。その時の印象を翌年『 東海道五十三次 』に結実させて刊行。好評を得て 風景画 家としての道を進む。以後、諸国 名所絵 、江戸 名所絵 の傑作を発表。代表作に『東都名所』『 名所江戸百景 』等がある。